心とお金を天秤にかけない生き方

「仕事なくなってしまうなぁ……どうしよう……」

今から6年前、僕は悩んでいた。自転車で日本一周をしたい! という気持ちが高まってきたのだが、それを実行するには仕事やめなければいけなくなるのだ。当時、僕はセミナー講師業とコンサルティングをしていて、旅をするためにはコンサルティング契約もいったん解消することになる。そして、旅をして帰ってきてから、またクライアントが見つかる保証なんてどこにもないのだ。

 

日本一周をする。それは、本当に思い付きでしかない。思いついたときには、僕はまずそれを否定した。

「いやいや、何考えてんだ! お金どうするんだ? 仕事は? そんなことしてる場合じゃないだろ? 帰ってきて、食べていけるの?」

そんな言葉が頭の中を駆け巡る。しかし、打ち消しても打ち消しても、僕の心は一向にすっきりしない。日本一周が離れないのだ。そこで、僕は鏡を見て、映った自分に問いかけた。

「本当に日本一周したいの?」

鏡の男は言う。

「行きたい!」

僕は、日本一周を今しないと後悔する気がして、日本一周をすることに決めた。

 

しかしだ。旅から帰った後の仕事のこと、お金のこと、生活のことが不安でたまらない。期間としては4か月間。その間、仕事を一切しない。収入はなく、支出ばかりだ。貯金もない。クライアントもいなくなる。講師やコンサルティングの仕事は好きだ。だから、旅から帰ってもその仕事に就きたい。でも、それが出来るかどうかの保証が全くない。せっかく好きなことを仕事にしてお金を稼げるようになったのに、それを放棄して、旅に出る。自分でその道を選択しているくせに、不安だとか言っているのだ。端から見たら、なんて馬鹿なことを言っているのだろうと我ながら思う。しかし、その時の自分は、どうしようもなく不安だった。

不安だ。不安だ。不安で不安でしょうがない。

どうしよう。どうしよう。

そんな不安がっていたのだが、やがて不安になることが馬鹿らしくなった。不安になろうがなるまいが、旅に出ることを決めたのだから、もうなるようになるしかない。どうなるか分からないけど、全ての結果を受け入れることにした。腹をくくったのだ。

 

それからの僕は、自転車で日本を一周することに意識を集中させ、道具を揃え、旅の資金を用意し、いよいよ出発。そして、4か月で日本一周を達成した。旅の途中、帰った後の仕事や生活について、一切の心配をしなかった。ただただ、旅を楽しんだ。不安を抱えたまま旅に出ていたら、ここまでは楽しめなかっただろう。しかし、胎をくくったことで、今を生きている、そんな実感が毎日あった。

旅から帰ってきてからも、仕事の不安は大してなかった。「さて、どうしようかな?」その程度のものだ。そして面白いことに、旅に出る前よりも仕事が増えた。旅の話を聞きにセミナーに来てくれた。僕の行動力、実行力、達成力を評価してくれ、信頼度も上がった。名刺交換の時も、「自転車日本一周しました」と伝えると、みんな驚き、記憶にも残して覚えていてくれる。日本全国を旅したので、あらゆる土地の話ができるようになり、コミュニケーションも取りやすくなった。旅をする前に感じていた不安は、杞憂に終わった。

 

この経験で分かったことがある。それは、自分の心とお金を天秤にかけるのをやめると、物事はうまくいくということだ。大抵の場合、やりたいことがあっても、お金が障害となり、やらないことが多い。「お金がないからできない」「お金があったらやります」などと言い訳をし、自分のやりたいことを先延ばしにする。僕がまさにそうだった。僕に有り余るほどのお金があれば、一切の不安はなく、さっさと旅に出ていただろう。お金がないから、旅に出ようかどうか、心とお金が天秤にかけられていたのだ。

心とお金を天秤にかけない。心を第一優先にした生き方を始めるのは、はじめのうちは怖い。なぜなら、心を優先させるとお金が入らず食べていけない、と信念がこびり付いているからだ。心を優先させて、本当にやりたいことをすると、生きていけない。そう信じているのだ。だから、不安になるし、怖い。しかし、実際にやってみると、心を第一優先にすると、お金とか時間とか必要なものは入ってくるのだ。神は勇気あるものに力を与えると言うが、お金に関する恐怖に打ち勝ち、自分の心に従って生きる勇気を持つものに必要なものを与えてくれるのだろう。そんな実感がある。

心とお金。この2つを天秤にかけるかどうかは、選択の問題だ。特に正解はない。が、本当に自分の人生を楽しみたいのであれば、天秤にかけることをやめ、自分の心に従って生きること。僕はそう感じる。そして、これからもそんな生き方をしていきたい。

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