セミナー依存症からの脱出

僕は、10年ほど前、コーチングをビジネスの軸にしていたことがある。ビジネスの軸というとちょっとカッコよく聞こえるが、クライアントはゼロだった。ビジネスとして完全に破綻していたのだ。当時、日本のコーチングスクールでコーチングを学び、さらにアメリカにわたって世界ナンバーワンと称されるアンソニー・ロビンズのコーチングプログラムも受講した。学んだことは実践し、セミナーでコンテンツを教えられるくらいに理解を深めた。しかし、コーチングのクライアントはいなかった。

ブログを書き、メルマガを用意。お試しコーチングも用意した。しかし、ブログのアクセス数は伸びず、メルマガの登録者もない。お試しコーチングは無料にもかかわらず、申し込みがない。完全に何かがおかしい。僕のコーチングは無料でも申し込みがないほど価値がないのだと、完全に自信を失っていた。

「こんなはずじゃ……」

完全に期待が外れた。そう、僕は期待していたのだ。10年前に海外でアンソニーのセミナーを受講する人は少なかった。ましてや、コーチングプログラムを受講した人は、10名もいない。その限定性でクライアントが増えるはず。そんな淡い期待をしていたのだ。実際、アンソニーのコンテンツを伝えるセミナーは集客ができた。日本でまだ知られていないアンソニーのコンテンツを知りたい人は、やはりいたのだ。しかし、僕からコーチングを受けたいという人はいなかった。コンテンツは学びたいが、相談はしたくない。そんな風に言われている気がして、とても寂しい気持ちだった。

 

その当時の僕の名刺には、こんな肩書が書いてあった。

アンソニー・ロビンズ認定リーダーシップ

アンソニーの名を借りて、クライアントが取れると思ったのだ。今思うと、他人のふんどしで相撲を取る、すごくカッコ悪い。おまけに当時は、アンソニーの知名度も低く、ほんの一部の限られた人にしか分からない。ビジネスにつながらない肩書だ。それは今でこそ分かるが、当時はこれが最善の策だと疑うこともせず、あちらこちらに配っては営業をしていた。当然ながら全滅だ。

僕は、国家資格を2つ持っている。マンション管理士と宅建。前職の時、仕事に繋がるかと思い、勉強し合格した。名刺の名前の横に、マンション管理士、宅地建物取引主任者を表記し、配り歩いた。
「これで仕事が増えるはずだ!」

しかし、そんなに甘くはなかった。全く仕事に繋がることなく、一銭もお金を生み出すこともできずに職を変えた。資格を取ったからといって、仕事に繋がるわけがない。それを体験したにもかかわらず、僕はまた同じ考えをしている。

「セミナーに出れば仕事に繋がる」

僕は、セミナーに出て認定をとれば仕事に繋がると信じていた。かつての失敗をすっかり忘れ、大金をはたいてセミナーに参加し続けた。セミナーに出ていれば、やがて仕事に繋がると。しかし、仕事に繋がることもなく、お金は一向に生み出せない。ドンドンとお金が出ていく。そしてやがて、全く首が回らなくなった……

 

僕は、愚かだった。完全にセミナーに依存していた。セミナー依存症だ。僕は、自分がセミナー依存症になるとは思っていなかった。しかし、気づいたらなっていたのだ。冷静に考えれば、セミナーに出れば仕事が増えるなんてことがあるわけないと理解できたはず。しかし完全にセミナーに参加すれば人生が好転すると盲信していた。痛い目をみて、専門スキルとビジネススキルは違うのだと分かった。僕は、セミナーが何とかしてくれると、完全に甘えていたのだ。しかし、ここでようやく甘えた自分を終わりにすることができた。

僕は、セミナーに甘えることをやめた。これまで学んできたコンテンツに甘えることをやめた。アンソニー・ロビンズに甘えることをやめた。名刺から、『アンソニー・ロビンズ認定リーダーシップ』の表記をやめた。セミナーでもアンソニーのコンテンツを使用することをやめた。アンソニーだけではなく、ほかの人のコンテンツを自分のセミナーの主軸にすることをやめた。もちろん参考にはさせてもらう。しかし、僕自身がこれまで培ってきた知識、経験を土台にコンテンツを創っていった。僕の人生を主軸にし、ビジネスにしていくことにしたのだ。

生活を立て直すため、派遣社員として平日は働いた。働きながら、自分を見つめ、コンテンツを創っていった。自分のコンテンツでセミナーも開催した。参加者の反応をみながら、ブラッシュアップしていった。アンソニーのコンテンツは使用しない。だけど、それと同等か、それ以上の効果が出るコンテンツを練っていった。創っては壊し、創っては壊し、クラッシュアンドビルドを繰り返す。そんなことを数年やっていたら、もう僕にしか話せないコンテンツになっていた。そして、そのコンテンツを気に入ってくれる人が現れ、紹介され、仕事になっていったのだ。

 

僕のメンターであるピーター・セージは、以前セミナーの中でこんなことを言っていた。

「誰かに憧れているうちは、リーダーになれない」

僕は、リーダーになりたかった。フォロワーの人生はまっぴらだ。しかし、かつての僕は、アンソニーに褌を借りた完全なるフォロワーだった。それは、僕の生き方ではない。だから、ビジネスとしてうまくいかなかったのだろう。僕は、リーダーとして生きることを決めた。アンソニーのコンテンツを使うことをやめ、アンソニーに

「僕のセミナーは君が統括してくれないか?」

そんなパートナーとして肩を並べる生き方をしたいと、自分のコンテンツを作っていった。そうしたら、自然とうまくことが進んだんだ。

僕は、思う。自分の人生を生きるためには、誰かのフォロワーになるのをやめることが大切だと。誰かに依存するのでも甘えるのでもなく、自分の足で自分の力で生きる。それがリーダーであり、美しい生き方ではないかな。これからも僕は、リーダーとして自分の人生を歩んでいきたいと思う。

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