英語は感情で学びなさい

「なんか違うなぁ……」

僕は、悩んでいた。英語劇の本番まで残り2週間を過ぎたが、自分の演技に全く納得ができないのだ。自分のセリフはマスターした。もちろんセリフは全て英語。僕は、英語が得意ではない。TOEICも440点ほどだ。でも、なんとかセリフを覚え、与えられた王子の役を演じている。劇だから他の演者さんとの絡みも当然ある。なんとか演じる。セリフを間違えたり、飛ぶこともほぼない。しかし、僕は納得ができない。違和感しかないのだ。

 

セリフは覚えている。台本を見ずとも間違えることは、ほぼない。台本を読み、王子の性格、心情の変化を読み取り、それに沿った演技をする。演出の先生にはOKをもらうが、僕は不満がある。演技にエネルギーが込められていないのだ。僕の演技は、中身のない上っ面の演技なのだ。エネルギーとは生命力だ。エネルギーがない演技は、生命力のない演技。役の持つ力強さや躍動感は、当然ながら出てこない。僕はそれを演じながら感じ、違和感を覚えていたのだ。

「どうやったら、演技にエネルギーを込められるのだろう?」

僕は考えた。自分の心の状態なのだろうか? いや、感情的には王子になっている気がする。しかし、あることをするとその状態が崩れることに気が付いた。それは、セリフを口にしているときだ。何も話さないときには、王子の状態でいられる。しかし、口を開くとその状態が崩れてしまう。

でも、なぜ?

 

その答えは、簡単に見つかった。問題は、英語にあったのだ。もう少しいうと、英語に感情が結びついていないことが原因だった。

例えば、”Thank you!”。これは日常でも使うため、”Thank you!”というフレーズと『ありがたい』という感情が結びついている。なので、英語で話しても感情が沸き上がってくる。では、”I‘m jealous!”(いいなぁ~)はどうだろう? 僕は、羨ましい時は「いいなぁ」を使い、”I‘m jealous!”なんて言わない。”I‘m jealous!”に『羨ましい』という感情は結び付いていない。だから、”I‘m jealous!”という言葉を発しても、『羨ましい』という感情は湧き起らない。こうしたセリフに感情がリンクしていないため、全てが上っ面で中身のない演技になってしまっていたのだろう。

感情とはエネルギーだ。感情のある演技だからこそ、エネルギーが込められた、生命力、躍動感のある演技ができるというものだ。僕は、試しに日本語で演技をしてみた。感情が湧き、エネルギーの入り方が段違いに違う。では、英語はどうだ? 途端に感情が抜けてしまう。これで、原因が分かった。そして課題は、解決策は英語に感情をリンクさせること。これができたら、エネルギーのこもった演技ができることだろう。

 

英語に感情をリンクさせる。僕がとったアプローチは、沸き上がった感情に英語をリンクさせる方法だ。まずは日本語のセリフを暗唱し、先に感情を引き出す。そこで、英語のセリフを発する。もちろん演技つきだ。英語に感情をくっつけるのではなく、感情に英語をくっつけていく。これを何度も何度も繰り返す。僕は、”I’m sorry”でさえ感情が湧かなかった。しかし、『申し訳ない』という感情を先に湧かせて、”I’m sorry”を発していたら、次第に”I’m sorry”で申し訳ない感情が湧いてくるようになった。まだまだ、反応は遅い。しかし、少しずつ”I’m sorry”というセリフに感情(エネルギー)が入ってくるようになった。

感情に英語をリンクさせる。そんな作業を延々と繰り返す。少しずつ、感情が込められるようになってきた。そして、面白いことに感情に応じて自然と体が動き、声の出方も変わってきた。「こう動かなきゃ」というのが無くなり「こう動きたい」という気持ちが高まってきた。演技に対してクリエイティブになってきたのだ。セリフに感情が入り、体の使い方、表情、声が変化していった。セリフに追われることもない。感情の伴わない演技で違和感を覚えることもない。これで王子という役を果たすことができる。そう感じたのは、本番の前日のことだった。

 

そして、いよいよ本番。僕は、王子役を楽しむことができた。演技の質としては、低いものだろう。しかし、セリフに感情が入り、表情もジェスチャーも心地よかった。英語が楽しい。演技が楽しい。それだけで良かった。こうして、3か月にわたる英語劇のレッスンは、幕を閉じた。

 

僕はこれまで、英語を何度も諦めてきた。海外セミナーに行ったり、海外スピーカーのサポートをするたびに、英語をマスターしたいと勉強を始めた。しかし、いつも長続きをしない。今思うと、単語を暗記したり、フレーズを暗記したりが機械的だった。義務でやっていたところもあった。英語が楽しくなかった。しかし、今回、感情に英語をリンクさせるというのは、とても楽しかった。『嬉しい』という感情を日本語だけでなく、英語でも表現できるようになったのだ。それも感情を伴って表現できる。世界中の人に『嬉しい』という気持ちを表現できるのだ。可能性がドンドン広がる。こんなに楽しいことはない。英語学習は感情がカギ。これからも、英語を楽しんでいきたい。

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